突然、葉は腕を取られ、ハオに引き寄せられた。わけもわからないまま、視界が反転し、先程まで突っ伏していた机に、仰向けに押さえつけられる。上半身だけが仰け反るようなその姿勢は、それだけでも苦しいのに、ハオはそんな事などお構いなしといった様子で、圧し掛かってきた。
 両の手首を頭上で一纏めにされて押さえつけられ、悲鳴を、あるいは怒号をあげようとした口は、ハオの空いた手で塞がれる。
「お前が悪いんだよ、葉・・・・・・。僕を置いていくから。でも許してあげる。僕はお前を誰よりも愛しているから・・・・・・・」
 ハオに耳元で囁かれ、ついでに耳朶を舌先で突つかれて、葉は恐怖に体を竦ませる。体の震えが止まらない。
 やめて欲しいと目で訴え、首を振って身を捩ったが、ハオはそんな葉の行為を不快そうに見下ろすと、くすりと微笑んで、葉の首元へと顔を埋めた。
「んんっ・・・・・うぅ・・・・・・・・!!!?」
「葉の首は細くて、白くて、本当に綺麗―――」
 ハオの唇が、舌先が辿った後を追いかけるように、首筋に熱が篭もっていく。
「ふっ・・・・・ん・・・・・・っ!」
 目に涙を浮かべて、葉はハオを見上げた。やめて欲しい。こんなのいつものハオじゃない。恐い。そう、想いを込めて。
 けれどそんな葉にハオは優しく微笑み返すと、どこかうつろな瞳で囁いた。
「諦めな。今日から葉は僕のものだよ・・・・・」











「無垢」という名の「罪」(上)












 葉にとって双子の兄のハオは、唯一自分の誇れる存在だった。品行方正な生徒会長。成績も優秀でスポーツも万能。学園の女子(と一部の男子)に黄色い声をあげさせ、でもそれを鼻にかけない。
 ――――――そして何より、小さい頃から自分にとても優しく、嬉しい時も哀しい時も、いつでも側に寄り添っていてくれた、大好きな兄。
 それがいつの頃からだっただろうか。自分と少し距離をあけるようになったのは。あれは・・・去年の14歳の誕生日だったか。両親から許婚の少女を紹介され、それを兄に告げた時から―――今思えば、そう思う。一緒に喜んでくれるとばかり思っていたのに、兄は不機嫌そうに、ただ「ああ、そう。それは良かったね」とニコリともせず言っただけだった。あの日以来、兄はあまり自分の側に居てくれなくなった。あんなに優しかった兄の豹変に戸惑いはしたが、許婚の少女や、今年3年になって意気投合してできた親友の蓮が、いつも側にいてくれたから、2人の優しさに心を宥められていたのだ。
「おめでと、葉。今日から15歳ね」
「なんだ、貴様、今日は誕生日だったのか」
 授業も終わり、葉が帰り支度をしていると、先に支度を済ませたアンナが葉の席の側を通り過ぎさま、目も合わせずに言った。言いながら真っ赤になって教室を出ていこうとするアンナに、葉は慌てて声をかけた。
「アンナ、どこ行くんよ、一緒に帰らんのか?!」
「・・・今日はおばさまの手伝いがあるから先に帰るわ」
「手伝い・・・・って何の?」
 葉の言葉にアンナは言葉に詰まる。鈍い鈍いと思ってはいたが、ここまで鈍いとは。
「あ・・・あんたとハオの誕生パーティーに決まってるでしょ?! いい・・・? 適当に時間を潰して、6時頃帰ってきなさい!」
「うぇっ・・・・・?!」
「それよりも早く帰ってきたら・・・・殺すわよ?!」
「は・・・・はい・・・・・・っ!」
 すっかりいつもの調子に戻って、アンナは半ば肩をいからせながら、ピシャリと盛大な音をたてて教室の扉を閉めて去って行った。
 それを唖然とした表情で葉と蓮は見送る。
「あ―――・・・今日は、誕生日だったのか、葉」
「おう」
「言えば、プレゼントくらい用意しておいたものを」
「ん〜〜〜、わざわざ言って知らせるような歳でもねぇしな〜と思って」
 宿題の出ている教科の教科書とノートだけを鞄に詰め込み、葉は席を立ち上がろうとして、蓮に制止される。
「時間を潰さねば、あの女に殺されるのだろう? ここでちょっと待っていろ。何か用意してくる」
「え・・・・いいんよ別に」
「そうはいかん。朋友となった者の誕生日に何も贈らないとなれば―――道家の流儀に反する。いいから、ここで待っていろ」
 トンと葉の額を小突いて椅子に座らせると、蓮はここで待つようにと再び念を押して、葉が止める間もなく教室を飛び出して行った。それを苦笑して見送って、葉は仕方なく蓮を待って時間を潰す事にする。
 まあ、もらったらもらったで、今度は蓮の誕生日にプレゼントをすればいい。
 そう気軽に考えて、葉は机に突っ伏した。何時の間にか教室には誰もいなくなっており、葉の影が一つだけ、差しかかる西日に揺れていた。
 午後の陽気に誘われるようにまどろんでいると、不意にカラカラと教室の扉が開く音がしたのに葉は気づき、閉じそうになる目蓋を叱咤して顔を上げた。
「やあ、葉―――一人かい?」
 扉の向こうには双子の兄のハオが、どこか張りつけたような笑顔で立っていた。
「ハオ・・・・・? どうしたんよ・・・・?」
 3年になってクラスが離れてしまい、葉はハオと一緒に家に帰る事をしなくなった。もちろんクラスが離れたからだけではなく、ハオが生徒会の仕事で、毎日のように駆けまわっていたせいもある。最近はアンナか蓮、もしくは3人で帰るのが常だった。
 どうしたのだろうと考えて、ハオも6時まで帰って来ないようにと告げられて、時間を持て余しているのだろうと思い至った。では生徒会の仕事も今日はないのだろう。
「なんだ、もしかしてハオの暇なんか?」
「・・・・・そんなところかな。葉はここで何をしているんだい?」
「オイラか? オイラは蓮が帰ってくるのを待ってるんよ。プレゼントを買いに行くって言ってくれて・・・・・・・・・・」
「ふうん・・・・・それは――――――丁度良かった」
 不意にハオの声音が低くなった。ハオは後ろ手で扉を閉め、教室に入ってくると、葉の側までやって来た。じっくりと葉を見つめ、伸ばした手で葉の頬を撫でる。
 かつてのハオがよくしてくれた行為の、けれどどこか絶対的に違う、まるで舐めるような視線と纏わりつくような手の動きに、葉は不安を覚えて身を竦めた。
「オ・・・オイラちょっとトイレに・・・・・・・・」
 ハオの視線から逃れたくて、葉ははやる内心を押さえて立ちあがる。足を動かし身を引こうとしたその時、葉はハオに腕をとられ、先程まで突っ伏していた机へと、上半身を押しつけられた。










「や・・・・やめっ!」
 葉は何とか身を捩ってハオの下から逃れようとしたが、上から押さえ込まれ、体重をかけられては、まともに身動きもできなかった。もともと力はハオの方が上だったし、重力もハオの味方だった。下から持ち上げて逃れるよりも、上から押さえつける方が容易いに決まっている。
「ふふ、僕としてもお前の可愛い声を聞いていたいけれど・・・・・あまり大声を出すと、人が来てしまうよ?」
 うっとりと目を細めながら、ハオは葉の制服を肌蹴させると、胸の上の2つの果実の一方を口に含み、もう一方を指で摘み上げた。
「ハオッ?! ・・・・・んぅッ!」
 口に含んだ方を軽く吸い上げ、時折舌先で突ついて柔らかい刺激を与え、指で摘んだ方には爪をたてて、痛みを与える。相反する施しに、痛みからとも快楽からとも判別しがたい表情の葉を見下ろして、ハオは満足げに笑った。
「ハオ・・・・っ・・・・何するんよ?! やめ・・・・・・!」
「言っただろう? 僕のものになってもらうって。―――意味・・・・・わかってる?」
「・・・・・・・・・?」
 言うべき事もわからないまま、目を瞬かせる葉を見て、ハオは嘆息する。やはり意味は通じていなかったらしい。
 けれど、それならそれで構わない。何も知らない葉を自分の色に染めていくのも悪くはない。葉は罪にまみれた者なのだ。無垢という、誰にも犯しがたい、神聖な罪。罪を償ってもらう事の、何が悪いというのか。
 摘んでいた指を放すと、ハオは葉の身体のラインを辿りながら、ゆっくりと手を這わせた。自分と双子とは思えない程、細くて華奢な身体つきに、優しく抱きしめたいという想いと、乱暴に扱って手折ってしまいたいという、2つの対立する想いが湧き起こる。
 葉のズボンのベルトに手をかけて引き抜き、足を広げさせるのに邪魔な全てを取り払ってやると、さすがの葉も顔を青褪めさせて、身を震わせはじめた。
「ハ・・・・ハオ・・・・・・?」
「声が出ないように・・・・・手伝ってやるよ」
「んぅッ?!」
 ハオは葉の頬に手を添えると、葉の唇に己のそれを重ねた。嫌がって顔を背けようとする葉の動きを片手で顎を掴み上げる事で封じて、口腔の奥深くまで舌を忍び込ませる。硬直したように動かない葉の舌を絡めとって己の中へと導き入れると、気の済むまで歯を立てた。
「ふっ・・・・・・あ・・・・・・・ぅ・・・・・・・!」
 あまりの刺激と酸素不足からか、葉が身体を痙攣させ始めて、ようやくハオは口付けを止めた。
 もはや抵抗するだけの力も失ってぐったりとしたまま大きく息をつぐだけの葉を葉の様子に、ハオは葉の頭上で纏め上げていた腕を解放してやった。それでも、その腕は押さえつけていた時の状態のまま、力なく放り出されている。完全に身体を動かすだけの体力をも使い果たしてしまったらしい。
 ハオはゆっくりと葉の片膝裏に手をかけると、持ち上げて己の肩へと担ぎ上げた。できた葉の足の間に己の身体を割り込ませると、取り出した己のものを葉の秘所にあてがった。
「いくよ、葉? 慣らしてないから・・・・キツイだろうけれど」
「え・・・・?」
 ハオの言葉に葉はようやく散っていた意識を取り戻したが、もう遅い。慣らしてもいないそこへと、ハオの楔が進んで行くのを、なす術もないまま受け入れる。
「う・・・・あ・・・・いた・・・・・やっ・・・・・・」
「やっぱり、慣らさないと駄目だったかな・・・・・? でも、まぁ、いいや」
「んあっ・・・・・っ・・・・・やああぁぁぁ―――んぐぅッ!」
 葉が悲鳴をあげはじめたので、ハオは再び葉の口を己のそれを重ねて塞いだ。痛みと恐怖に擦れた悲鳴は、くぐもったそれとなって、ハオの口腔へと流れ込み、まともな音にならなかった。
「んうっ・・・・うッ・・・・ぐッ・・・・・・!!」
 ハオは葉に口付けて悲鳴を奪いながら、腰を動かし始めた。ゆっくりと己を引き出し、再び穿ち込む。
「うんっ・・・あぅ・・・・ふぅッ・・・・・!!」
 口腔に流れ込む葉の悲鳴に煽られるまま、楔を突き入れる動きはどんどん早くなっていった。何度も探るように角度を変えては、葉の柔らかな内壁を己のもので擦り上げる。
 特に葉の反応が激しかった箇所を重点的に幾度か責め立てると、葉はあっけなく熱を解放した。
「もう・・・・・いっちゃったの、葉。僕はまだなのに。ずるいなぁ・・・一人だけで」
 抵抗はおろか悲鳴をあげる体力も気力も失って、ただ荒い息をついている葉を見下ろしながら、ハオが葉の今にも折れそうな細い腰に手をかけ、再び葉を貫いたままの己の楔を動かそうとした、その時。








「待たせたな、葉――――――っ・・・なっ・・・・何をしている貴様ッ?!」
 青いリボンが清楚に施された小さな包みを手にした蓮が、教室の扉を開けて入ってきた。
 ハオは蓮の声に顔を上げると、目を大きく見開いたまま、立ち竦む乱入者へと、妖艶な笑みを向けた――――――。












to be continued・・・


リア様から相互リンク記念で頂いた小説です★
ちょっとヤバイですよ〜vvこの小説は!
ハオ様が・・ハオ様が・・・ハオ・・(しつこい;)
めっちゃ鬼畜じゃないですかvv私こういうハオ様大好きですわ!
ハオ様が葉君を自分のものにしようと、無理やり身体を重ねようとしているわけです。
しか〜も!最後に蓮ぼっちゃままでご登場と来ました!

この後葉君はどうなるのでしょうか?そして、蓮ぼっちゃま一体どうするのか??

すべては後編でわかりますよ〜v


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